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時空間分解X線吸収微細構造(XAFS)計測技術の開発と
燃料電池触媒構造反応解析の事業内容について

燃料電池車実現のための固体高分子形燃料電池システムの技術開発は、解決すべき喫緊の社会的最重要課題の一つである。そのため、燃料電池触媒系の研究開発が産学で行われているが、2020-2030年頃の燃料電池車の導入を想定した技術レベルとは大きな開きがある。その原因は、発電下での燃料電池触媒表面の化学反応過程の詳細がほとんど理解されてないこと、触媒性能の素要因が不明であること、触媒の失活原因、特に電位変動による白金触媒の溶解機構が明らかでないことなど、燃料電池技術開発のための大きな障害が存在していることにある。次世代技術開発のブレークスルーのためには、燃料電池ナノ金属粒子触媒自身の解析を行い、燃料電池の動作下での構造と電子状態の変化を明らかにし、ナノ粒子表面上の基本的な触媒反応を解析し、ナノ粒子一粒毎の電気特性、或いはナノ粒子集団での電池特性を明らかにすることが求められている。実燃料電池系は、電極、高分子電解質、水分、炭素担体、反応ガスなどからなる不均一混合分散系であるため、測定条件に制限のある電子分光法、電子顕微鏡、走査プローブ顕微鏡、赤外吸収分光などの振動分光法、超高速レーザー分光法、熱分析などがほとんど使用できず、これらのことがわからなかった。このような複雑な反応系である燃料電池の動作下で触媒自身の構造・反応を直接計測することができるのは物質透過力の強い X線を使うXAFS計測法が唯一の強力な方法であり、燃料電池触媒研究に威力を発揮することを本センターの岩澤センター長等の研究グループが実証することに成功した。 本事業では、その研究成果を踏まえ、大型放射光施設 Spring-8に「電通大 SPring-8拠点」を置き、放射光を用いた世界最先端の「先端触媒構造反応リアルタイムXAFS計測ビームライン」を新たに建設する。この新ビームラインを用いて、①時間分解XAFS計測、②空間分解XAFS計測、③深さ分解XAFS計測の3つの計測技術を世界に先駆けて開発する。そして、これらの技術を駆使して、これまでの分からなかった固体高分子形燃料電池触媒系の原子構造、電子状態等のミクロ構造の役割を解明することによって、原子レベルでの素反応過程と鍵反応過程を明らかにし、一方で触媒材料の劣化の支配的因子・要因・メカニズムを明らかにすることで、高活性・高耐久性燃料電池の開発指針を提示することを目指す(研究開発期間: H22-26年度、研究予算:35億円)。 本事業により、燃料電池研究開発が格段に進み、燃料電池自動車の普及・実用化に向けて、我が国が世界を先導する立場を築き、力強い日本の構築に貢献できるものと考えている。

参考資料

① 本委託事業では、大型放射光施設Spring-8 に「電通大SPring-8 拠点」を置き、放 射光を用いた世界最先端の「先端触媒構造反応リアルタイムXAFS計測ビームライ ン」を新たに建設します。

新しく建設されるビームラインがSpring-8のビームラインマップに記載されます。

②時空間分解XAFS計測技術は燃料電池触媒開発にとって必須の要因を明らかにす るうえで威力を発揮します。

○固体高分子燃料電池の実現・普及のための課題解決には明らかにしなければならな いことがありましたが、電子分光などの従来技術では分かりませんでした。

○物質透過力の強いX線を使うX線吸収微細構造(XAFS)計測を用いると、これ らのことが分かることが、XAFS研究で世界をリードしてきた岩澤センター長等 の研究グループによって実験的に示されました。XAFS計測により高活性・高耐 久性固体高分子燃料電池開発指針が得られること期待されます。

○時間分解XAFS 計測法で分かること

○空間分解XAFS 計測で分かること

○深さ分解XAFS計測で分かること

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